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2021年04月21日

【東大FFP第17期】なべたん日記・DAY_1

「書こう書こうと思うだけでは筆は進まず、気づけば16期が終わり17期が…(汗)」の巻

最後の日記は11月18日…すでに4月15日(木)16日(金)で、17期 DAY1がスタートしておりました(汗)深い反省を込めて、前回(5ヶ月以上も前)の続きから話を進めたいと思います。

前回のなべたん日記でお伝えしたことは、次の3点でした。
(1)授業には毎回共通した、明確な「型」がある。
(2)授業者から学習者(受講者)への支援の度合いが徐々に低くなっていく。
(3)授業で学ぶ内容(コンテンツ)が、ワークなどの実体験として、随所に設定されている。

(1)については、東大FFP全体としてだけでなく、各授業での『目的・到達目標』もご紹介しましたが、「型について、実はもうひとつある」などと思わせぶりなことを書いて、そのままにしておりました(汗) 今回はこれらの話とつなげながら、DAY1-Introductionについてご紹介します。(紹介といってもDAY1後半の「高等教育の現在」などの部分には触れていませんので、内容全体にご興味のある方は、のものをご参照ください)

introductionの語源は、intro-(〜の内側に)ducere(to lead / to guide)とのことですが、目的と到達目標を示してleadしつつも、丁寧にguideされています。guideといえば、今期の東大FFP説明会で紹介された”From Sage on the Stage, To Guide on the Side”(King,A. 1993)ですね。この東大FFPを受講されるみなさんのon the Sideでguideするって感じです。〔英語苦手なのに、この段落、多いわ~〕

前回紹介の(2)でいえば「支援の度合い」が高いDAY1ですが、この後、少しずつ着実に「手放し」ていきます。それは受講生の皆さんの学び手としての主体性を大切にすることにもつながりますね。この授業だけでなく、8回の授業を通しての『設計』がそこにちゃんとあります。これはいずれ紹介される『コースデザイン』でまた。

【ひとりごと】初中等教育でも、今、「学習者主体」という言葉がひとり歩きする中、最初から「手放し」という光景は少なくないです(自戒を込めて)。しかし、そこに学習者の状態を想定して、どのようにどこまで関わるのか、という『設計』があるかどうかは大きな点ですね。そして学習者の状況に応じて、その『設計』をベースにしつつも授業のリアルは臨機応変に、そして、『設計』自体も随時見直していく、ということの連続ですね。このあたりは次の授業で紹介される『ADDIEモデル』で詳しく。

そんな『設計』は、1回の授業の随所に施されています。特にDAY1は、授業者と学習者も初対面ですし、学習者同士も、ほぼ初対面です。しかし、授業者と学習者をつなぐ系だけの授業構造ではなく、学習者同士をつなぐ系が大切な授業でもありますので、その『設計』は非常に巧妙にできています。そのあたり、以下でお伝えしますけど、字数多めでご容赦ください(先にいっておこう)。

最初の活動は、「今日の体調はいかがですか?」「画面に出ている人をみて、顔見知りは何人いますか?」という問いかけから。この回答は、Zoomの投票機能(匿名)を使って、選択肢から選ぶだけ。さくっと気楽に答えられるもので、オンラインでの発信(アウトプット)に慣れていってもらいます。

次はブレイクアウトルームで初対面の人との交流へと進みます。いわゆるアイスブレイクなのですが、ここでの活動は『自己紹介からの他己紹介』です。

話す内容は「東大FFPへの参加動機」です。これについては、東大FFPの応募の際に200字で提出が求められている、つまり一度は言語化されていますので、1分間ほどで自分の発言内容を整え、それからブレイクアウトルームに2人ずつ入って、互いに伝え合います(この『Think-Pair-Share』という手法も次回詳しく)。

大事なのはこのあとです。
2人での自己紹介が終わったら、今度は2つのペアを合体して、4人のグループとして、再びブレイクアウトルームへ。そこでは、今、ペアで聞いたばかりの自己紹介を、他のペアの方に紹介する、つまり『他己紹介』を行います。インプットしてのアウトプットです。相手の話を丁寧に聞き取り、それを他者へ丁寧に説明することが求められます。最初のペアでの自己紹介は、かなり真剣に聞き合うことになります。ある意味、逃げ道がない聞き取りです(笑)
当然、『他己紹介」までの流れを説明していますので、焦る必要はないですが、覚悟して臨む聞き取りです。でも、そうやって丁寧に聞き取ってくれることは、話す側としてもとても親密感がもてますよね。なんとなくの自己紹介だけをすることとは、決定的な違いがあります。実際、興味深いことは、初対面同士のはずの関係性が、この活動を通して不思議とよくなっていくことですね。受講者同士のよい関係をつくるための、授業者側の丁寧な工夫だと、私は思っています。

加えて、話は前後しますが、「互いに学び合うための協力的環境づくり」として、東大FFPでは次のグランドルールがあります。
• 「さん」づけで呼びます(大学院生と現職教員が共に学ぶ仲間として壁を作らない工夫です)
• どんなことからでも学べる(失敗や転ぶことからの学びは大きいということで、栗田先生も私も転びまくっています=ある種の安心感もセットで…汗&笑)
• 相手の話を関心をもってよく聴く(いわゆる傾聴の姿勢ですね)
そして最後に
・相手への発言は 3K( 敬意を持って・忌憚なく・建設的に)で

初回DAY1は、この『他己紹介』まで、丁寧に時間をかけて行いますが、その効果は大きく、受講生の声としても反映されています。そして、さまざまなところで関係性の良い交流が増していきます。そのような土壌づくりがここまでの「設計」にありますね。

このあと休憩が入り(ストレッチもあります!)、次は、自己紹介のテーマを「自分の研究分野の紹介」とし、今度は最初から4人のグループで行います(もうすっかり馴染んでいますね)。これも東大FFP応募の際に「200字で他の分野の人にもわかるように」書いていただいていますので、短時間ですぐに対応はできるようです。

ちなみに、この自己紹介を実施する前に、「なぜ、授業の最初に授業者は受講生に向けて”自己紹介”をするのか」という、その意義や価値についての問いがあり、その問いへの受講者の声(匿名)がGoogle Formに入力され、spreadsheetで共有されます(オンラインだとさくっとできますね)。実は、この自己紹介、単なる先程までのアイスブレイクの延長ではなく、今後、受講者の方達が授業者になるときに、学習者の「モチベーション」づくりなどに大きく影響すると言われています。このあたりは、『期待価値理論』()や『ARCSモデル』といったモチベーションの話が次回でてきますので、そこでまた。そして、DAY6・7で実施する『模擬授業』にむけても、コンパクトでインパクトのある「自己紹介」は大切になります。

そう、これが5ヶ月以上前にお伝えした(3)ですね。まず「経験」の場が提供されます。この「経験」が次の「学び」の段階で「あ、あのときにやったことだよね」となり、経験と学びが紐づきます。物事を理解し、自らの「学びの体系」を作る上で、とても大切なことになります。

DAY1 Introductionは、これからの学びと紐づく大事な経験を得ながら、初顔合わせの人たちが、オンラインという画面上でのみ関わる環境の中で安心してスタートできるように、guideするように設計されている、ということですね。

【ひとりごと】初中等教育の場で、学習者主体の授業で、授業者は何をするのか、というのがよく話題になっています。学習者が安心して学びにはいっていけるように、授業者が「学びの場」を丁寧に設計することは、授業者の責務でもありますね。Guide on the Side.には、さまざまな手立てがあると思います。「学びの場づくり」はこちらもぜひお読みください♪

さて、例によって長くなりました。
最後に、5ヶ月以上前の(1)で述べた「実はもうひとつある型」についてお伝えしましょう。

授業の最初に『目的と到達目標』が示され、当然、授業の最後にもそれが示されて『ふりかえり』の時間となります。これは、どんな授業にも共通する基本の型だと思いますが、東大FFPの各授業では、その最後に『デザイン』というスライドと説明が入ります。

DAY1では、
• “授業初回仕様”「互いを知る」から構成
• 体験ベース
• 問いかけ(Closed Question); ClosedからOpenへ
• 他己紹介; まずは二人組から慣らす
• Input-Output
と書かれていました。

つまり、「この授業をどのように設計したか」ということが最後に紹介されています。受講生の方が「授業の裏側を見せていただいた」と振り返りに書かれていましたが、分刻みでスケジューリングされた「授業設計書」と共に、授業づくりの舞台裏を受講生にお見せします。

それはなぜか…

だって、受講者の皆さんは、いずれ(あるいは今)高等教育の授業者になる方達ですからね。そのためのプログラムである東大FFPの中に、自分の受けた今日の授業の設計がどうなっているのかを伝える内容が含まれていることは、極めて目的に見合った大事なことだと思います。

ふぅ~、なんとか5ヶ月前の話を、今回のDAY1に紐づけられたかな…(汗)
次回・DAY2からのなべたん日記は、各回の授業の様子をフツーにお伝えしますね。字数は少なめで…(汗)

ではまた。

あ、東大FFPについては、次のリンク先に解説や2020年度開講の授業等が紹介されていますので、ぜひご覧になってください♪

(公式)東大FFPサイト
東大OCW 大学教育開発論(東大FFP2020年度開講分)
インタラクティブ・ティーチング(動画サイト)

大学総合教育研究センター
FFP担当 研究支援員 鍋田修身
(NPO法人SOMA アドバイザー)

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