2018年09月03日
【開催報告】「インタラクティブ・ティーチング」アカデミー第3回「学びを促す評価(ルーブリック)」
先日終了しました下記のイベントにつき、当日の模様と、次回の予告について簡略ながらご報告します。
「インタラクティブ・ティーチング」アカデミー 第3回「学びを促す評価(ルーブリック)」
日時:2018年6月3日(日)9時~16時、8月3日(土)14時~17時
場所:東京大学本郷キャンパス 工学部2号館93B教室
参加者数:34名(二日目は23名)
講師:栗田佳代子(東京大学 大学総合教育研究センター)
吉田塁(東京大学 教養学部)
中村長史(東京大学 大学総合教育研究センター)
1.テーマ・目的
今回のテーマは、「学びを促す評価」でした。「学習者の学びを促すような評価をすることができる」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。
①評価の意義を説明できる(事前課題に対応)
②ルーブリックの改善を通して、評価の際に注意すべき観点を説明できる(一日目の午前の内容に対応)
③学習者の学びを促すルーブリックを作成する(一日目の午後の内容に対応)
④ルーブリックを自分の現場で用い、よりよい活用に向けて改善する(二日目の内容に対応)
2.概要
今回は、一日目にルーブリックについて学びあい、ルーブリックの作成および改善を行い、現場の授業で実際に用いたうえで、二ヶ月後に設定された二日目にその実施報告と改善を検討するために再び集まるという「学習と作成―実践―実施報告と改善」という構成としました。参加者の方々が本講座で学んだことを着実にご自身の授業に活かすことを目指しました。
また、反転授業型の本講座では事前課題が設けられていました。当日は、事前学習の復習に続いて、サンプルのルーブリックを改善する演習や、自身の授業で用いるルーブリックを作成する演習を行ないました。
(1)事前学習
動画「インタラクティブ・ティーチング」および書籍『インタラクティブ・ティーチング』(河合出版、2017年)の該当章(week6、6章)を視聴・読了してくることが参加者全員に課されました。また、希望者は、ルーブリックを作成・提出することができました。
(2)一日目:6月3日
【1】趣旨説明(9時~9時15分)
本日のプログラム全体の目的や構成、本イベントにおけるルールを確認した後、参加者同士の自己紹介を行ないました。
【2】事前学習の復習(9時15分~9時30分)
事前学習の復習についてグループワークを交えて行なうことで、知識の定着を図りました。ここでは、評価一般における意義や注意点を中心に改めて確認しました。
【3】ルーブリック改善演習(9時30分~11時45分)
サンプルとして配布されたルーブリックの優れている点と改善点とを指摘するグループワークを行ないました。事前課題とその復習で得た知識を実践できるようになることに、その狙いがありました。
【4】ルーブリック作成演習(13時~15時30分)
午前の改善演習で学んだポイントを踏まえて、自身の授業で用いるルーブリックの作成を行ないました。個人での作成とグループでの意見交換を繰り返すことで、設定した目的・目標に沿ったルーブリックになっているかを確認しました。
【5】まとめ(15時30分~16時)
まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを、グループワークや質疑応答を通して、確認しました。
(3)二日目:8月3日
【1】趣旨説明(14時~14時10分)
二日目の目的や構成の確認を含め、プログラム全体の目的やルールを改めて確認しました。
【2】実践報告・グループワークでの改善(14時10分~16時40分)
まず、各人が一ヵ月の間で実践できた点、できなかった点やその理由、悩んでいる点について報告していただきました。その後、ルーブリックの更なる改善案についてグループワークを通して検討しました。
【3】まとめ(16時40分~17時)
まとめでは、二日間を通して学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを、グループワークや質疑応答を通して、改めて確認しました。
3.参加者の反応
大学・高専教職員14名、大学院生・PD7名、高校・中学校教職員7名、小学校教職員1名、専門学校等教職員3名、民間企業2名の計34名の方々にご参加いただくことができました。二日目については平日開催となったため、所属先のご都合で参加がかなわない方が少なからずいらっしゃったものの、23名の方々に引き続きご参加いただきました。満足度について5段階評価(際立って良かった、大変良かった、良かった、まあまあ、良くなかった)で尋ねたアンケートでは、70%の方が最高評価の「際立って良かった」、26%の方が次点の「大変良かった」、4%の方が「良かった」と回答されました。
また、一日目と二日目との間に二ヶ月を空け、設計、実践、報告の機会を設けたことについて5段階評価(大変効果が大きい、効果が大きい、わからない、あまり効果がない、全く効果がない)で尋ねたアンケートでは、61%の方が最高評価の「大変効果が大きい」、35%の方が次点の「効果が大きい」と回答されました(実践の機会がなかった4%の方が「わからない」)。ワークショップに二日間参加したことで今後の実践は変わりそうかについて、やはり5段階評価(大きく変わると思う、変わると思う、あまり変わらないと思う、全く変わらないと思う、わからない)で尋ねたアンケートでは、52%の方が最高評価の「大きく変わると思う」、48%の方が次点の「変わると思う」との回答でした。自由記述欄にいただいたコメントには、以下のようなものがありました。
「実践の機会があることによって、実体験を通じて記憶に残り、次のステップへと進みたいというモチベーションにもつながった」(大学教員)
「実践して二日目に報告をしなければならないため、忙しくても頑張ってやらなければとなる」(高校教員)
「様々な属性の参加者や講師からコメントをもらえたので、自分の立ち位置からばかり考えていた内容を客観的に捉えることができた」(大学教員)
今回は前回に続き二度目の二日制の試みでしたが、一定の高い評価をいただけたことに安堵しております。参加してくださった方々が実践を共有し続けられる場を設けていくとともに、更なる高評価を目指してアンケートで挙がった改善点(一日目と二日目の間の間隔をどの程度設けるかなど)を検討し、次回以降の企画・運営に活かしていきたいと考えています。
4.次回予告
次回は、11月11日(日)にシラバスをテーマとした一日完結の講座を予定しております。詳細が決まり次第、お知らせいたします。皆様のご参加をお待ちしております。
参考情報
動画「インタラクティブ・ティーチング」 JREC-IN webサイト 東大FD webサイト
書籍『インタラクティブ・ティーチング』(河合出版、2017年) https://www.kawai-publishing.jp/book/?isbn=978-4-7772-1794-6(河合出版webサイト)
中村長史 (「インタラクティブ・ティーチング」担当・特任研究員、本講座総合司会)